番組表
児玉泰一郎
松尾良一 2019年02月19日
2月10日、延岡西日本マラソンが開催されました。
実況を担当して7回目となる延岡西日本マラソン。
振り返れば初めて実況を担当することが決まった時、
「走る」という動作をひたすら続けるマラソンをどうやって実況すればいいんだろうと戸惑うばかりでした。
選手に取材に行っても何を聞けばいいんだろう...と不安ばかり。
そんな時「目標は優勝です!!自信あります!!!」と目を輝かせて答える選手がいました。
当時21歳の旭化成の松尾良一選手です。
...間違いない...優勝は松尾選手だ!
だって自信あるって言っているんだもん!
何かにすがりたい私は松尾選手を徹底リサーチすることを始めました。
陸上版星一徹と呼ばれる父親のもと3歳から陸上をスタート、
1日20㌔走り、足におもりをつけての学校生活、中学生で42㌔走。
ただ高校卒業後念願の旭化成入りを果たすもレベルの高さについていけず駅伝メンバーにも選ばれない日々...マラソンに生きる道を求めての出場。
ん?ドラマみたいなストーリーだな...もしかしたら他の選手も...
と、選手の「勝ちたい理由」を知ることの大切さに気付かせてくれたのも松尾選手でした。
その年の松尾選手の結果は17位。
練習もできて絶好のコンディションで臨んだということでしたが、レース後
「優勝を意識し過ぎて前半から力みがあった。結果は悔しかったがマラソンについて多くの事を学ばせてもらった」と話していました。
42.195㌔という長距離を走るマラソン。
少しでも力みがあると、それがひずみとなって後半のスタミナ切れや足の痛みにつながるそうです。
私も松尾選手の走りからマラソンについて多くの事を学ばせてもらいました。
その後松尾選手は延岡西日本マラソンで
2014年2位(2:12:11)(大会での旭化成最速タイムを記録)
2016年優勝(2:15:09)
2017年優勝(2:13:36)
2018年3位(2:12:19)
と結果を出し続けます。
戦績だけを見るとこのようになりますが、
私は自信が持てないと話していたランナーが結果を出すことで精悍な顔つきになるところ。
夫となり、父親となり優勝を果たし、表彰台で子どもを抱きかかえる姿。
松尾良一というランナーを通して長編のドラマを見せてもらっているような気持ちです。
今年の大会、松尾選手は2019年4位(2:13:26)でした。
前日の生中継インタビューの時はいつも通り明るく振舞っていた松尾選手でしたが、中継後に調子を聞くと「故障の影響もあって正直本調子ではない」と話していました。
それでも30㌔過ぎで積極果敢に仕掛ける姿、その代償で苦しくなっても粘り切る走りを見せた松尾選手、今後の彼がどのようなドラマを描いていくのか続編がとても楽しみになる走りでした。