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特集
2025年03月03日
津波から命を救うために 中高生が探究する防災(2025年03月01日放送)
2024年8月8日、日向灘沖を震源とする最大震度6弱の地震が発生しました。
この地震は宮崎県南部を中心に被害をもたらし、津波注意報が発表されました。
さらに初の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。
当時、宮崎市青島では五ヶ瀬中等教育学校と日南高校の生徒が津波避難訓練を実施中でした。
訓練中に実際の地震が発生するという想定外の状況に、生徒たちは「急すぎて頭が追いつかず、死んでしまうかもと思った」と当時の不安を語りました。
さらに、2025年1月13日夜にも日向灘沖を震源とする最大震度5弱の地震が発生し宮崎県内で20センチの津波を観測。
この出来事は、再び宮崎県民に防災への備えを考えさせるきかっけとなりました。
地域住民へのインタビューと現地調査
今年2月23日、青島の「渚の交番」には再び五ヶ瀬中等教育学校と日南高校の生徒の姿がありました。
生徒たちは地域住民に、昨年8月と今年1月の地震についてインタビューを行い、「昼間と夜間の避難行動の違い」「地震前後での防災意識の変化」を調査しました。
五ヶ瀬中等教育学校では、放課後の自主講座で防災に関する研究活動を継続。
3年前から延岡市や日向市でのフィールドワークを開始し、昨年2月からは多くの観光客が訪れる青島でも現地調査を実施。今回で4回目となりました。
青島でのインタビューでは、「地震が小さかったから避難しなかった」「津波の予兆となる海の引き潮を見てから判断した」という声が聞かれました。
しかし、実際には「海を見てからでは遅い」という津波避難の原則を再確認する機会となりました。
課題と改善提案
生徒たちは、宮崎市危機管理部の職員や地域住民の代表に調査結果を報告しました。
例えば、避難経路の看板について、「矢印の向きが分かりにくい」「観光客や土地勘のない人にも分かりやすくするべき」と発表。
これに対し、宮崎市の担当者は「来年度以降の事業で改善を検討する」と応じました。
また、「避難場所にトイレや屋根がないと避難をためらう」といった声もあり、行政側は「必要な設備を整備することで、避難率の向上が期待できるなら検討する価値がある」と前向きな姿勢を示しました。
専門家の評価と活動の成果
現地調査には、京都大学防災研究所や九州大学の専門家も参加。
九州大学の杉山高志准教授は「(生徒たちは)防災を単なる標語ではなく、地域特性や個人特性に合わせた具体的なアプローチをしている」と称賛しました。
また、行政側も「科学的データに基づいた高校生の提案は非常に価値があり、行政でも重要視すべき」と評価しました。
この活動は、昨年12月に九州大学で行われた成果発表会でも評価され、参加した60組の中から最優秀賞を受賞。
災害時に生徒たちが宿泊していた青島の施設では「生徒たちの取り組みを見て、避難設備を見直した」との声も寄せられました。
「一人でも多くの命を救いたい」という思い
生徒たちは「僕たちの活動が街の安全につながり、実際に災害時に一人でも多くの命が救われたら嬉しい」と話しています。
特に、避難誘導の看板設置に向けた行政の動きが始まったことは、生徒たちの提案が実際に地域の安全向上に貢献していることを示しています。
宮崎市青島は多くの観光客が訪れる地域であり、災害時には「誰もが安心して避難できる場所」であることが求められます。
高校生たちの実践的な視点からの提案は、行政の改善にもつながり、防災対策の強化に役立っています。若い世代の声に耳を傾け、防災意識をさらに深めていくことが求められています。