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2021年03月22日
不妊治療の現場と課題(2021年03月20日放送)
今回のFOCUSは妊娠を望む夫婦が赤ちゃんを授かるために治療を行う不妊治療について考えました。
国のデータでは、16人に1人は「体外受精などの不妊治療で誕生した出生児(2018年)」、
夫婦の5.5組に1組は「不妊の検査や治療を受けたことがある(2015年)」と言われています。
このデータからもわかるように不妊治療は決して特別なことではなく、身近なことになっています。
しかし不妊治療を受ける夫婦を取り巻く環境は決して整っているとは言えません。
- 【話:県産婦人科医会 肥後貴史 会長】
初診で受診される方の年齢が上がっており、体外受精のデータでは、10年、20年前には平均年齢が35歳くらいだったが、今では40歳前後くらいになってきています。
その理由の一つは晩婚化によるもので、不妊における年齢の要因は非常に大きくなってきています。また、年齢が上がると卵子の状態もありますが、高血圧などの合併症が増えてきます。
県内の特定不妊治療費の助成制度の申請件数は、15年間でおよそ5倍(2019年は900件)。
共働き世帯の増加や晩婚化を背景に不妊治療を受ける夫婦は県内でも増加しています。
一口に不妊治療と言っても、検査の結果に基づいて治療は段階的に進んでいきます。
しかし保険が適用されない治療になると体外受精で1回あたり約38万円、顕微授精で1回あたり約43万円の費用がかかり高額です。
こうした経済的負担の解消に向けて、国が動きました。
菅首相の肝煎りの施策である不妊治療への支援。
国は体外受精などの保険適用外となっている不妊治療費の助成について以下のように条件を緩和しました。
- 所得制限:撤廃
- 助成額:1回30万円
- 助成回数:1子ごとに6回まで(40歳以上43歳未満は3回)
- その他:事実婚の夫婦も制度を利用可能となった
この条件緩和に伴い宮崎県の新年度予算でも、不妊治費等助成事業の予算額は今年度から2億円近く増加し、2億9,100万円となりました。(今年度予算:9,700万円 ※ともに当初予算)
しかし、不妊治療を受ける夫婦の負担は経済的なものだけではありません。仕事との両立ができず、仕事や不妊治療をやめたり、雇用形態を変更した人の割合は34.7%となっています。
- 【話:県産婦人科医会 肥後貴史 会長】
自分が不妊治療をやっていることを会社に知られたくないという気持ちもあって、「何で休むの?」「何で早退するの?」と言われて、結局は仕事を辞めましたという患者さんもいます。
退職して不妊治療だけに専念していくと、それしかなくなって追い詰められていくという状況になり、かえってストレスが増えていくということがあるので、患者さんの中でそういう話が出た時は、仕事を続けた方が良いという話をしているのが現状です。
不妊治療に関する助成制度や相談窓口といった情報だけではなく、当事者が抱える悩みや職場など周囲の理解が重要であることについても伝えていくため、県は新年度、不妊治療支援環境づくり事業(600万円)として啓発活動を強化します。
また、この不妊治療と仕事の両立については、国が支援することが新年度予算案に盛り込まれ、今国会で審議されています。
内容としては、以下の取り組みを行う中小企業に対して国が助成金を支給するというものです。
- 不妊治療のために利用できる「特別休暇制度」を新たに導入
- 「時差出勤」などの柔軟な働き方を活用しやすい職場環境の整備に取り組む
治療を受けている夫婦の悩みや葛藤をまず知って理解することで、みんなが働きやすい社会の実現に向けて繋げていきましょう。