番組表
特集
2022年04月18日
"日本に残したい伝統工芸"江戸時代から続く匠の技「都城大弓」(2022年04月16日放送)
全長2メートルを超える迫力と美しい曲線。
南九州で古くから作られ国の伝統的工芸品に指定されている「都城大弓」。
その一大生産地 都城市に、伝統技術を受け継ぐ弓師「横山黎明さん」がいます。
- 【話:横山黎明弓製作所 3代目 横山黎明さん】
竹のどの部分を切るか、傷はあるかどうかを確認して、良ければ切るとか、確認するところはいくつもあります。
やっぱり実践で失敗を繰り返しながら、技術を習得していかないと無理だと思います。
良質な竹の産地として知られる「都城市」は、全国トップの竹弓の生産量(約8割)を誇っています。
1917年創業、都城市で100年以上「都城大弓」を作り続けている「横山黎明弓製作所」。
35年以上に渡り「都城大弓」を手がける3代目横山黎明さん(61)、2代目の父親の姿を見て育ち、物心ついた時から弓と触れ合ってきました。
現在は長男の慶太郎さん(32、弓師歴8年)と共に弓を製作しています。
長男の慶太郎さんはどうですか?
- 【話:横山黎明弓製作所 3代目 横山 黎明さん】
10年ぐらいで形にはなりますが、私もまだまだですので、息子はなおさらまだまだです。1人前に早くなるように、できれば私を超して腕を上げてくれればいいと思います。
江戸時代から技術が伝わる「都城大弓」は、材料となる竹を集めるところから始まります。
生い茂る竹林の中からまっすぐに伸びた節の間隔が同じ竹を探していきます。
- 【話:長男 横山 慶太郎さん】
都城大弓に使われる竹の種類の1つです。ウサンチクと呼ばれる南九州に生息していると言われる竹の竹林になります。基準となる竹を中心として見たときに、節の位置が全然違いますよね。これを一個ずらしてみると微妙に合っているようには思うんですけど、一番上の黒いところが内側にきていて入ってないので、適合する竹ではないと判断します。
竹の切り出しを11月~12月の寒い時期に行い、水が抜けるまで3~4カ月かけて自然乾燥させます。
その後、火入れ(竹表面の油や汚れを落とす、竹を軽くし虫をつきにくくする)し、削り(握り部分から端に行くにつれ薄く削ることで、曲がりやすくなる)、打ち込み(芯材(ハゼノキなど)を竹で挟む、くさびで締め付け半円状に反らせる)、張り込み(反発力が強いため2人がかりで作業)をしていきます。
それぞれの工程は数値化されておらず、感覚と経験に頼る部分が多いと言います。
弓師歴8年の慶太郎さんはまだ修行中。父 黎明さんの作業を見守ります。
都城大弓は、200以上の工程はすべて手作業で行われ、1本作るのに約1年かかるといいます。
そんな手間暇かけた黎明さんの弓を使い続けている人がいます。
- 【話:宮崎大学 弓道部 井脇 悟 師範】
初代の黎明さんの弓を昭和52年から引いていまして、非常に黎明さんのところの弓には愛着があります。都城大弓はなかなか口頭やマニュアルでできるものではなく、口伝で伝えていくものですから、大変だろうと思います。
手入れをすれば80年間使えるとされる「都城大弓」は、時代の流れとともに次世代に引き継ぐべき伝統工芸品として、その価値が注目されています。
しかし大きな課題となっているのが後継者不足。
ピーク時市内に約30軒あった製作所は、7、8件にまで減少し、現在「都城大弓」の伝統工芸士は全国に黎明さんを含め4人しかいません。
そのため、伝統工芸品を後世に残していくため、現在各地の小学校で体験学習などを行っています 。
- 【話:横山黎明弓製作所 3代目 横山 黎明さん】
作り方はほとんど変わっておらず、昔からの伝統的な製作方法で作り上げています。 - 【話:体験学習に参加した児童]
道具の扱い方に慣れていて、さすが長年作ってきた人たちだなと思いました。
弓をしてみたいなと思いました。
伝統技術を後世に、地道な取り組みを続ける中、黎明さんの孫達も弓師への思いが芽生え始めています。
- 【話:横山黎明弓製作所 3代目 横山 黎明さん】
私が生きている間に孫がここにそろって仕事ができると一番いいかなと思います。
将来の夢は?
- 【話:長男 横山 慶太郎さん】
新しい方が始められるのがすごく難しい業界なので、それをカバーできるように親子で3世代、その後世も一緒にこの業界を守っていけたらと思います。 - 【話:横山黎明弓製作所 3代目 横山 黎明さん】
昔からの伝統技術で作られている竹弓をぜひ使っていただいて、全国の方にも広めていただけると嬉しいです。ぜひ弓道を始めていただければと思います。