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特集
2023年06月05日
手仕事で魅せる"宮崎漆器"の伝統と技(2023年06月03日放送)
4月に開催されたG7宮崎農業大臣会合で、宮崎市から各国の大臣に贈呈された"宮崎漆器"。
その美しさに感嘆の声が上がりました。
9カ月もの工程を経て作られる器は艶やかで上品。
手に触れると滑らかさと温もりが感じられる逸品です。
宮崎漆器工房(宮崎市大島町)
大島漆器工房(大島授産場)では、障がい者や施設職員などおよそ40人の職人たちが制作を行っています。
太平洋戦争末期に沖縄など南西諸島からの集団疎開の地となったこの地区で、琉球塗りの技術者がいたことをきっかけに漆器作りが始まります。
1957年に県が雇用の場として社会福祉施設法人が運営する授産所を設置。
琉球塗りをルーツとする漆器工房ができました。
下地付けから漆塗り、模様入れまで一貫して行っているのはこの工房が唯一ではないかと、日髙正則施設長は話します。
漆器づくりの工程
下地付け
様々な木材の生地に下地を塗る作業。塗料を10回前後繰り返し塗り、補強していきます。
研ぎ
表面を研ぎ 平らにしながら細かい溝を作ることで漆を入りやすくします。
工房最年少の23歳 温水謙さん
伝統工芸士を目指す温水さんは妥協を許さない仕事ぶり。
研ぎの加減がよくないと、前の工程に戻らないといけない繊細な工程。
8 ~ 10時間かけて作業するそうで、週に2枚ほど作成しているそうです。
「一枚でも多く」ではなく、「一枚でも綺麗なもの」を作ろうと心がけて作っていると話します。
上塗り
数カ月間かけてしっかりと乾燥させた後の塗りの工程。
ホコリが入らないよう2重扉にした作業室で伝統工芸士のみが行います。
伝統工芸士 岩元学さん
小さなホコリや音などを遮断した息を呑むような空間の中、数カ月かけてできた土台となる器に漆を載せていきます。
乾燥
漆を塗った後は「漆室(うるしむろ)」で乾燥します。他の塗料と違って乾くのに湿度が必要な漆。
水分を取り込んで中の酵素と反応してから乾燥するので漆室に入れて湿度をしっかり管理しながら一晩中かけて乾かします。
堆錦(ついきん)
仕上げは堆錦と呼ばれる絵付け。宮崎漆器の特徴は、漆から作った色付き堆錦餅を薄く伸ばし、切り取って加飾。
琉球塗りの流れをくむ器は南国特有の艶やかな風合いの柄が施されます。
矢野テル子さんは27歳の時にこの施設に入所。
この道50年以上の堆錦職人で、去年宮崎県の伝統工芸士に認定されました。
職人達の丁寧な手仕事によって、9カ月ほどの時間をかけて作られる宮崎漆器は、県内外から高い評価を受け、2023年4月 G7宮崎農業大臣会合で、各国の大臣に弁当箱と箸が贈呈されました。
故郷に思いを馳せながら、宮崎の地で漆器作りを伝えた琉球塗の技術者たち。
宮崎漆器へと名前を変えたその器は、宮崎の特産品となり、地元の職人達が大切に育て続けています。
お問い合わせ
宮崎漆器工房
宮崎市大島町北ノ原1029【MAP】
TEL:0985-25-3668(月曜日から金曜日 8:00 ~ 17:00)
HP:https://urushimi-miyazaki.amebaownd.com/