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特集
2023年06月12日
過去最悪の酪農危機 先の見えない酪農家の今(2023年06月10日放送)
宮崎県には現在187戸の酪農家があり、12571頭の乳牛を飼育しています。
年間の生乳の生産量は7万トン台を推移していて、九州では2番目の規模です。
酪農家を苦しめる三重苦
新型コロナによる学校給食の停止。
そしてロシアのウクライナ侵攻でおよそ3年前から事態が変わり始めました。
特に打撃が大きいのは飼料の高騰。
高いものだと以前の2倍の価格に。
飼料代が収入額を超えるようになり、去年は全国の酪農家のうちおよそ84.7%が赤字になりました。(令和5年3月時点)
宮崎でもこの3年で27戸の酪農家が離農の判断を下しました。
酪農家の不安と苦悩
新富町で25年酪農を営む「本部博久さんと妻の芳恵さん」は、230頭の乳牛を飼育しています。
2010年口蹄疫で当時飼育していた122頭全てを殺処分で失った半年後、農場の規模を拡大し再スタート。
人員不足を補うため国の助成を活用し、ロボット牛舎を導入しました。
- ロボット牛舎
登録された牛の情報をもとに自動で搾乳を行うシステムで、設置費用はおよそ2億円。
しかし新たなスタートを切った翌年、酪農危機に直面。
飼料高騰に加え機械を使う経費もかさみ、借金の返済を前に赤字が続きます。
生産性をあげるために牛たちに負荷をかけてしまう現状に苦しい胸の内を明かしました。
- 【話:酪農家 本部博久さん】
高い飼料を使っても足りないお金が増えていくだけなので、地域の未利用資源(廃棄・放置されている資源)の活用や自家栽培などでコスト削減を今年から初取り組みはじめています。このままではやっていけないなと思って・・。
飼料代のコストを下げることができますが、機械の燃料代などの新たなコストがかかり、正直どちらがいいのかが分からないのが現状なのだそうです。
苦渋の決断 廃用(肉牛用)への転換
中でも一番苦しいのが、乳の出が悪い乳牛を以前よりも厳しい基準で廃用(肉用牛)に転換させることだと話します。
- 【話:酪農家 本部芳恵さん】
(肉用牛にするのか)選別することが、一番の苦しみ。今足りない経費の分を毎月5頭が離れていくことで埋めていくような感じになっています。足りない部分を埋めるために選別をする、それが今一番キツイ。二人で喧嘩しながら迎えに来る日の朝まで決めきれない。
あがいても光の見えない毎日。
一度だけ博久さんの口から「辞める」という言葉が溢れたこともあったといいます。
そんな中、お二人のモチベーションになっているのが、酪農家に携わりたいと考えている子供たち。
今預かってる牛たちの命を守るために、そして未来の酪農のためにも、使命を胸に奮闘しています。
離農に伴い牛たちの安楽死という苦渋の決断を余儀なくされる方もいるなか、宮崎県内には「牛がいきいきと暮らせる環境を目指していきたい」と話す本部さん夫婦の他にも現在187戸の酪農家が奮闘しています。
宮崎県酪農協議会 石川幸保会長は、「牛乳を飲んで身体づくりをしてもらい、この難局をみんなで団結して乗り越えたい」と話します。
酪農家の存続のためにも、牛乳の応援消費が求められます。
中央酪農会議 ミルクジャパン発行
「ミルクレシピブック」には牛乳を使ったレシピが掲載されています。