番組表
特集
2022年03月21日
Jリーグ最年長審判 現役にこだわる鉄人(2022年03月19日放送)
サッカーJリーグが開幕し、3月13日にテゲバジャーロ宮崎は見事に白星を飾りました。
今回は、現在Jリーグ現役最年長の審判である宮崎市在住「中井恒さん(53)」のサッカーにかける情熱を取材しました。
- 【中井 恒さん(53)】
Jリーグや天皇杯で審判を務めたのは、これまでに500試合以上。現在、Jリーグ最年長の審判です。 - 【話:県内の審判員】
審判員はみんな中井さんを目指していて、全国の審判員のお手本になっている方です。
- 【話:日本サッカー協会 黛 俊行 審判委員長】
ほとんどの一級審判員はご存知だと思います。53歳でアシスタントレフリー(副審)を続けられるのは、非常にすばらしい審判員だと言えると思います。
中井さんは、ヘルメットや安全靴など安全保護具を取り扱う会社を家族で営んでいます。
Jリーグのシーズンが始まる3月頃から12月末までの土日はほとんどが県外での試合で、金曜日の仕事終わりに会社から直接空港に向かうこともあるそうです。
- 【話:中井さんの母 うめ代さん】
月末になると売り上げが少ないから「サッカーばかりしているが」というのは口癖のように言っていました。サッカーをしていたから取引する会社に行っても「サッカーしている中井さんですね」と言って、決めていただくこともあるので、それがずっと繋がっているんだなと思っています。
サッカーの審判は、それぞれのクラスでジャッジできる大会のレベルが変わります。
中井さんは審判の中でトップレベルの一級審判員の資格を25歳の時に取得。
以降、年1回の更新のための体力や競技規則テストなどを毎年通過し、現在もJリーグ最年長の審判として活動しています。
審判に求められる能力は?
- 【話:中井 恒さん】
横向きで走りながら前に走る必要もあるので瞬発力とサイドステップが重要になります。また、判断力も必要になるので、審判員はほんと専門職です。
審判の中でも副審のプロフェッショナルである中井さん。
その大きな役割がオフサイドの反則を主審に伝えることです。
オフサイドはゴール前で待ち伏せにできないようにするルールです。
後方から数えて2番目にゴールに近い相手選手より内側にいる味方の選手にパスを出すとオフサイドの反則となります。
2番目にゴールに近い相手選手がオフサイドラインとなるため、副審はオフサイドラインと一緒に動くことが多くなります。
フィールドに面して動くため、素早いサイドステップと瞬発力が求められます。
これまで数多くの大舞台で副審を務めた中井さんの印象に残っている試合は?
- 【話:中井 恒さん】
僕らのジャッジで勝つか負けるかが決まる「2010年天皇杯 川崎フロンターレ VS 横浜FC」が印象に残っています。
横浜FCが1点を追いかける延長戦終了間際、ゴールネットを揺らし歓喜する選手、しかしピッチにはホイッスルが、中井さんのジャッジでした。
中井さんはキーパーとディフェンダーの位置が変わってキーパーがオフサイドラインになったことを見極め、白のユニホーム横浜FCの選手がオフサイドポジションにいることを見逃しませんでした。
キングカズこと三浦和良選手も決定的シーンだっただけに、審判に詰め寄ります。
- 【話:中井 恒さん】
若いですね、カズ選手もまだバリバリでしたから。その時に僕らが対応の仕方もちゃんとしておかないと「自信ないんじゃないか」「大丈夫か」と思われたらいけないので、緊張感を持って選手と一緒にピッチに入ります。
審判と同様に、中井さんがライフワークとして続けているのが、自信が総監督を務める中学生のクラブチーム「セントラルFC宮崎」の指導です。
- 【話:クラブチームの選手】
常に選手の事を気にかけて熱心な監督です。コート作る時の長さが30cmずれていてもすぐわかって指摘されます。
中井さん自身も小学校の時にサッカーを始め、宮崎中央高校(現 鵬翔高校)サッカー部に所属していました。
- 【話:中井 恒さん】
小学校5年生から父親が作ったサッカー少年団に入ったが、その当時はまだJリーグが誕生しておらず、プロがあればプロになりたいという夢を抱いていました。身体が小さく、なかなか厳しいとは思っていましたが、サッカーをしたいという情熱は誰にも負けなかったと思います。
卒業後、競技者としての第一線を退いた中井さんは22歳の時、鵬翔高校のコーチに就任した際、審判の魅力に気づいたそうです。
- 【話:中井 恒さん】
高校の紅白戦や練習試合の時には審判が必要だったので、率先して審判をしていました。そんな時に練習試合で一級審判員の存在を知り、目指そうと思いました。
元々はJ1や国際試合などの副審を務めていましたが、年齢もあり2021年はJ2を担当、2022年はJ3を任されることになりました。
それでも審判会の鉄人は現役にこだわります。
- 【話:中井 恒さん】
ジャッジがぶれてきたり、走れなくなったりすると、身を引かないといけないんでしょうけど、「あのおっちゃんまだやっているの?」と後ろ指されていたとしても、そういうことに臆せずやり続けられるのであれば、やっていきたいという気持ちは常々持っているし、まだ若いやつには負けんぞという気持ちを持っています。
2月20日、ユニリーバスタジアム新富 テゲバジャーロ宮崎と鹿児島ユナイテッドFCの練習試合
審判にとってもJリーグ開幕前の大事な調整となる。フィールドに問題が無いか確認するのも審判の役割。
- 【話:中井 恒さん】
眼を慣らすためにはスピード感、自分の体調、足の具合、どういう選手がいるのか把握するということも含めてすごくいい練習になります。
53歳となった今も精力的に動く中井さんの姿に刺激を受ける選手も!
今シーズン、テゲバジャーロ宮崎に加入した「北村知也選手(鵬翔高校・宮崎産経大出身)」。中学時代は中井さんのクラブチームに所属していました。
- 【話:北村 知也選手】
自分がどれくらい成長したかを見せられたらいいなと思ってプレーしました。中井さんが審判を続けていることについては、すごいパワフルだし負けていられないですね。
そして、もう1人。この日、中井さんと一緒に副審を務めた「海野晴香さん(20)」
- 【話:海野 晴香さん(20)】
サッカーは高校でやめたけど、それでも宮崎に残ったので、サッカーに携わりたいと思って始めました。選手とのコミュニケーションの取り方が自分はできないので、そういう部分は中井さんがすごいなと感じます。いま三級なので二級を取れるように頑張ります。
自らの姿を見せ後輩を引っ張る中井さん、日本審判会のトップは審判の質の高さの必要性について話します。
- 【話:日本サッカー協会 黛 俊行 審判委員長】
高いサッカー環境を担保するというのは、審判員に与えられた重要な役割であるため、選手の技術の革新とともに審判もレベルアップしておかないと、サッカーのレベルは上がっていかない。中井さんの持っているキャリアは宮崎県にとって大事なものだと思いますので、ぜひキャリアを若い審判の育成に生かしてほしいです。
進化を続ける日本サッカーとともにある審判達の姿!また新たなシーズンが始まります!