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2022年10月10日

NO.60 ひなた在宅クリニック山王 院長 田代 和馬さん(宮崎市出身)(2022年10月08日放送)

先週に引き続き、東京都大田区を中心に、自宅で過ごす末期がんの患者や高齢者を訪ねる訪問診療を行う田代 和馬 医師 33歳(宮崎市出身)をご紹介しています。

01 田代 和馬 医師

夜中や土日は、1人での診療も多く全部1人でやることも多いそうです。

この日は、ホスピスで過ごす 末期がんで療養中の女性(86歳)が高熱を出したということで駆けつけました。
遠方にいる家族にも安心を届ける工夫をしている田代医師は、福島県で働く息子さんにテレビ電話で状況を報告します。

02 末期がんで療養中の女性

  • 【話:ひなた在宅クリニッック山王 院長 田代 和馬 医師】
    意外と調子良さそうで、表情もいいし、手もあたたかいから、数字以上にこの状態はそんなに悪くないですので、在宅酸素の治療を開始するのと抗菌薬点滴を一日一回やろうと思ってます。
  • 【話:福島県にいる息子さん】
    どうもありがとうございます。
続いて向かったのは、末期がんの男性(90歳)の部屋。

死亡を診断後、患者の死を弔う田代医師。
患者に寄り添いながら誰もが穏やかな気持ちで人生の最期を迎えられるような医療を目指しています。

03 手を合わせる
04 田代 和馬 医師
  • 【話:ひなた在宅クリニッック山王 院長 田代 和馬 医師】
    この方は、がんでしたので、死因はがんと記載するんですが、「がんに負けたわけじゃない」とご家族には伝えています。御本人が、がんに最後打ち勝って相打ちになっちゃうけど、「がんに打ち勝ったからこそこんなに穏やかに旅立たれたんですよ」っていう話を必ずお声かけしています。がんにやられたんではない、患者さんが、がんをやっつけたんだとお伝えしています。(患者さんは)立派だな、お疲れ様でした という思いです。
日々患者とその家族に寄り添う田代医師は、故郷宮崎でどんなふうに育ったのでしょうか?

田代医師が3歳、弟が0歳の時に両親が離婚。女手ひとつで、母親が育て上げたそうです。
当時夢中になっていたのは、住んでいた集合住宅のゴミ箱に捨ててあった学習ドリルを拾って、勉強すること。
当時は、ゲーム感覚で取り組んでいたそうです。

05 母親

「母親は、常に働く姿を見せてくれていた。日々資格をとるための勉強をしている母の姿は、働くこと、学ぶことが自然なことなんだと背中で教えてくれていた。今でもすごく感謝している。」と語ります。

中学から鹿児島へ進学した経緯

中学受験の際、宮崎大学附属中の抽選に外れ、挫折を味わいますが、たまたま模擬試験で残した成績がきっかけで、鹿児島県の池田学園(中学校・高校)から声をかけてもらい、特待生として鹿児島県で過ごしました。

06 鹿児島時代

当時卓球部の部活顧問の先生から、「田代の経済状況が厳しいことは知っている。だけど君たちには、大学受験という人生で最後の公平な人生一発逆転のシステムがあるんだ」と説かれて非常にワクワクしたことを今でも覚えているそうです。

宮崎大学 医学部へ進学後、"断らない救急医療"を実践する沖縄県立中部病院で研修を積みます。

研修医1年目にして約2200人の患者を診療するという過酷な経験が、その後の医師として進むべき道を照らします。

07 断らない救急医療

  • 【話:ひなた在宅クリニッック山王 院長 田代 和馬 医師】
    沖縄の病院が他の病院の研修と明確に異なるのは、5年後に離島や僻地(へきち)の病院の院長になるという明確な目標があるんです。僕は沖縄県北部の離島や僻地に派遣され、僻地医療の経験を積みました。
沖縄で学んだ事が他の地域でも生かせるのか、自分の力を試したいという思いから、2019年4月東京で「ひなた在宅クリニック山王」の開業へと至りました。

沖縄時代の病院で看護師として共に働いていた奥様・桃子さんと、3歳の長男、9カ月の長女とともにクリニックから徒歩10分の場所で暮らしています。

08 妻 桃子さん

休日は不定期。常に患者の状況が届いたり丸々休みはないそうですが、奥様は・・・

  • 【話:妻 桃子さん】
    仕事が忙しいほどいきいきしている気がします。忙しいのが好きなのかな。
    常にいろいろ考えている人なので、家事は全く出来ないと思います。忙しいので・・
    ただ、子どもとの時間を大切にしてくれます。
09 休日の公園
10 妻 桃子さん

沖縄時代の同僚だからこそ理解しあい、今でもご主人を尊敬していると語る桃子さん。

認知症の男性(85歳)

去年心筋梗塞で倒れ、食欲もなくなってきた男性をとても心配していた奥さんや娘さんに、今後の見守り方について話をしました。

  • 【話:娘】
    食べないと心配で、これ食べろ、あれ食べろと言ってしまう
  • 【話:ひなた在宅クリニッック山王 院長 田代 和馬 医師】
    意外と本人が選ぶんです。心臓に負担がかからないお菓子を食べたがるとか、自分の体の声が出てくるので、本人が食べたいものを食べたい分だけ食べれば丁度いいんです。
    家族が頑張って栄養のいいもの出してあげても「いらん!」と言われて、家族は落ち込むし、なぜ食べないんだ!と思うけど、だけど本人が食べたいものを食べたい分だけ食べれば丁度いいんです。

11 家族に説明

  • 【話:ひなた在宅クリニッック山王 院長 田代 和馬 医師】
    老衰っていうのは、言い換えると"気まま"。気ままが一番楽で、長生き。
    お父さんは認知症があって、気ままに過ごされてるから全然心配することないんです。
  • 【話:娘】
    安心しました。何が起きるんだろうと思って。
    食べなくなったし、急に朝起きれなくなったりするのかなと思ってたので・・
  • 【話:ひなた在宅クリニッック山王 院長 田代 和馬 医師】
    基本的に急変はおきなくて、安心を積み重ねていけば大丈夫。なんとかします。

12 田代 和馬 医師と娘さん

変わりゆく父親の姿に不安を感じる娘さんの心に寄り添い、力強い言葉で励ます田代医師。娘さんは安堵感で涙がこぼれていました。

~印象に残る患者さんは~

家族に勘当されてしまった末期がんの男性患者

何十年も会っていない娘と息子に会いたいという願望を叶えるため、田代医師が自ら子供達を探し出しました。
見つけ出した娘さんからは、当初「父親とは会いたくない」と言われたそうです。
3日間ほど説得し、親子の再会を実現。その後は、娘さんが献身的に看病し、最期は尊厳のある死を迎えました。

その後、娘さんから「家族にもう一度戻してくれてありがとう」と言われ、「自分はそういう仕事をしたんだ」と改めて自分の仕事の意義を感じたといいます。

13 病気だけではなく

病気だけでなく、患者さんの周り、むしろ家族に対するケアがメインだと話す田代医師。

今日も、患者さんのため患者さんの家族のために、"断らない診療" を続けています。

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